おもえば、LEGO IDEAS(旧Cuusoo)は開始以来、トレイン系の企画で10000票達成したものは出てきませんでした。BTTFのジュールベルヌトレインが例外ですが、あれはバック・トゥ・ザ・ヒューチャーの版権物としての性格が濃厚。それも、レビュウで落とされてしまいましたが。
LEGO IDEASはどうしても「わかりやすい」版権系が強いです。
そして、トレイン系は投票というシステムではどうしても不利になります。
鉄道系は地域により好みが分散しやすい。多くのファンは自国形優先。アメリカのファンはアメリカ形を好みますし、欧州でも欧州形が人気。過去の10000代製品でもマースクトレインはアメリカで人気欧州で不人気。ホライゾンエクスプレスは見事にその真逆でした。
また、すべての人が高速列車が好きなわけではない。すべての人が蒸気機関車を好きってわけでもないのが更に票を分散させてしまいます。
好みを集中させて10000票に繋げなければならないのですが、それには誰も成功できなかった。
その意味で、この企画は「がんばった!」と。そして画期的でも。
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「Vintage Tram」 kevinszeto様
https://ideas.lego.com/projects/119603
ポルトガルはポルトのヘリテージトラムのモデル化です。
クラシックで優雅な路面電車。そして今なお健在であり、多くの観光客を街に呼ぶ力を持つ、街の魅力足り得る電車でしょう。
モデルもディテールフル・丸みもエレガント。
このルックスで10000票を獲得。納得です。
8幅ラージスケール。これ自体は否定しません。8幅やそれ以上への挑戦は国内外でも多く見られる傾向ですし、自動車なども含めたラージスケール傾向自体は欧米のほうが先行していますから。
(6幅派。4幅車派として言いたいことはなくもないですけど、ここは趣味趣向の差異です)
ただ……水を差すのも難ですが。
動力化への配慮はなさそうです。ディスプレイモデル前提か。
デザイナーさんは街の一部としての路面電車は考えておられるのでしょうが、自走が最低限の前提である「鉄道模型」としての考慮がないのはかなり残念。
手転がしにしても、この画像のままでは軸距長すぎてカーブは曲がれないでしょう。というかこの種の古典単車って、もっとホイールベース短めでオーバーハングは長めなんですよね。車輪は内側に寄ってるもんです。
その一方で、走行や実用に支障をきたしそうな足回りのヤバゲなディテールが無いのは寧ろ評価したいのですが。しかし、デザイナーさんが実物のこの種の電車の、複雑なディテールを理解されないままに割愛されたと思うと……。
わかった上での簡略化と、知らずの簡略化はまるで別物です。前者は鉄道模型の名門はどこでも行ってきた手法ですが(走行性能を求められるマスプロダクツの玩具としての鉄道模型の宿命です)、このモデルに感じるのは寧ろ後者のような……。
インテリアは備わります。窓ピラーはタイルみたいですが、どうやって立てているのでしょう?
第一印象はとても好ましいモデルですし、無論、トレイン分野から10000票達成もこの上なく嬉しい。
しかし、よく見ると惜しい部分も少なくない。
ここを大胆に、鉄道模型としてアレンジできる人がレゴ社に居るか?
(動力化への配慮や、足回りの改善など……)
それでも、このモデルが「駱駝を針の穴に通す如き」本社レビュウを通ることを期待しています。
なにより、トレイン系でのLEGO IDEAsに10000票突破の希望が持てることが嬉しいじゃないですか。