如何にもな、玩具の汽車、ディズニー的なカートゥーン。また、西部劇の汽車にありがちなあの雰囲気。
そんなアメリカ系の4-4-0が長いこと、苦手でした。
やはり、悪い意味で玩具的な印象が過ぎたのでしょう。
ダイヤモンド形の煙突、カウキャッチャに派手な塗色や装飾。玩具やディズニーのイメージ。やはり幼児的な玩具のイメージなのです。もっと渋くておとなしいのが好きなのに……!
さて。
明治の日本にも大量にやってきていたアメリカ製の4-4-0。
煙突はストレートですし。カウキャッチャではなくてバッファに真空ブレーキ。そして塗色だって多くはおとなしく上品……黒に金差し(真鍮)でバッファビームが赤といった程度。
更に、昭和まで使い込まれリャ装飾はどんどん喪われ、色だって真っ黒。
そうした事情を知ってくると、苦手意識はだんだんと憧れに変わって行きます。
それでも。制作順位は中々上がりません。
4-4-0でも俄然、エレガントな英国系の方が好みでしたから。
「ネルソン」6200を3回手掛けて2両健在、そして「ピーテン」5500も1両制作。多くは電車と共存した時代……東武鉄道での1960年代設定で造っています。
でも、資料を集めると、同じ東武鉄道で1957年まで生き残っていたと言われるボールドウィン製のD1形。東武での呼称もそのものずばりの「アメリカ」が気になってきます。。
数年掛かりで妄想し、東武博物館にいくたび、展示パネルの前で制作を誓うも……。

構想数年、やっと、できました。
やはり電車と共存してた古典蒸機の一つ。
国鉄形式では山陽鉄道12形→5900形がほぼ同型ですが、あちらは急行用ですから脚の大きなスピードの出る機関車。

黒一色に僅かな差し色。
ワゴントップのボイラ。
軽快な、足回り!
タイル使ったツルツルのランボード。
細部の仕上げに関して、既に多くのアメリカ製古典機を造ってこられたyamatai氏作品は意識せざるをえなかったのですね。

シリンダ廻りを8幅内に収めるのも、yamatai氏の流儀です。
煙室扉はやや派手めにしてみました。

サイドビュウ。
主題枠は「透けて見える」こと、意識。
第1動輪をフランジレスにしています。

バックビュウ。
私鉄の貨物・入換機ですからこっちを前に走っても様になりそうです。

動力は平凡なテンダドライブです。PUハブは006P化して高さを抑えてます。

足回り。タイル使ったランボードは苦心の作です。
アメリカ機だからといって動輪剥き出しではなく、フランジがランボードの奥に隠れるくらいの慎みはあるのですよ!
先台車は缶胴ではなく、きちんと主台枠に持たせています。
ここで4-4-0で大事なこと。
先台車に対して、主台枠がおんぶするような作りにすること。こうしておけば2軸ボギーの安定した先台車が、機関車全体を急カーブでも上手く誘導し、整備状態の悪い線路でも高速で走ることが出来るのです。
これに気がつかず、主台枠に先台車がぶら下がるような作りにしてしまうと安定走行のための先台車が却ってじゃまになるという本末転倒になってしまう。自分は10年以上、この間違いに気が付かなかったのでした(苦笑)。

裏面。至って平凡。
先台車はシリンダの内側で首を振り、これでR40はクリアできます。
ここらもyamatai氏作品は意識せざるを得なかったのです。偉大なる先人……。

5500形との並び。
同じ4-4-0でスペックが近くとも形状が大きく違う「エイトホイーラー」な英国機と、「アメリカン」な米国機。

優雅さとワイルドさの対比でありましょうか。

尤も、工作の良さで長生きしたのは英国流儀の機関車の方でした。
5500ほか、英国系の4-4-0は1966年まで生き延び、保存機も少なくないのですが。アメリカ製の4-4-0はそれこそ東武D1が1957年に引退したのが、ほぼ最後に。
蒸機を保存しておこう……という時代まで残れず、1両も現存していないのは残念でなりません。

それでも、この1両を作ることでアメリカ製機関車の魅力に気がつくことは出来ました。ここから広がる可能性は、日本形の昭和まで生き延びた個体に絞っても相当なものです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
記録として。
少し仮完成版も貼っておきます。




2021年11月の仮完成版。
ランボードはポッチ仕上げ。やや粗い。
それ以前に、動輪のホイルベースが長く、アメリカ機としては違和感がある姿でした。
思いついたら改良、大事です。