2020年の7月末に発表され、大変に驚かれた作品です。
(記事は便宜上 発表日前後の日付にしております。記事投稿は2021年の6月9日となります。前後することご容赦ください)
シェイ式蒸気機関車はギアードロコの中では最も成功したもの。
アメリカのライマ社でン百両と製造されています。大きめのボギー機関車ですが、ボギーであるがゆえにカーブに強い。森林鉄道のような低規格の鉄道で重宝されたのでした。小さいものは10噸前後、大きなものは40噸や55噸など。必ずしも軽便用に限られず、標準軌のものも少なくなく、です。
日本国内(内地)では数両しか、それも目立たないところでしか稼働しなかったものですが、台湾の阿里山森林鉄道での活躍は知られるところです。1970年代まで現役機でありましたし、動態保存機が何両もあります。
(アメリカでは、産業用軌道そのものの衰退はやかったこと、残ったところも早期に内燃化されてしまったため、WWII後は保存鉄道くらいでしか残れなかったようです)
レゴでは、何度か通常軌間用の可動モデルが作られてきました。
もりりん氏の作品が有名でしょうか。2017年ですね
http://legotrain.seesaa.net/article/445649273.html
さて。
レゴ的にはとても難しい題材です。
動力電伝達自体はユニバーサルジョイントに優秀なものがありますから難しくないのですが、それを動輪横の限られたスペースに実装してしまうこと。
そして、シャフトは車体の外側ゆえ、折れ曲がる位置が素直ではないのですね。cvジョイントという前後方向の動きを吸収できる実物どおりの?ジョイントもありますが、しかし小さな機関車に組みこむにはちと長過ぎる。
通常軌間でも難しい題材です。
それを、より小さなナローゲージへ!

5幅ナローの枠で実現されています。
偏った缶胴が3、その横のエアタンクが2。
それよりも足回りですね。「Railbricksのコンテストで優勝したStephen Pakbazさんのを参考に。できるだけ短くなるようにがんばった」とのことですが、その小さくするのが難しいのです。
ユニバーサルジョイントの曲がる部分と、台車と車体の接合ピンの位置を揃えているのが分かりますね。こうじゃないと、シェイは曲がれません。
強度が不安になる足回りですが、テクニック系でガチガチに固めておりますね。上記の接合ピンも含め、不安がありません。
想定ミニマムカーブはR36とのこと。
レゴ社の純正ナローカーブはR24なのですが、幸いにも今はtrix-brixにR36カーブレールが存在します。同社のポイント類もR36前提ですよね。

正面から。
本当に、5幅です。
足回りの飛び出しなども気になりません。

気になるサイドビュウ。
全長は約26ポッチ。
モーターはほぼ中央部、キャブ内に縦置きされ、シリンダ付近に動力伝達されます。それを後方台車及び、シリンダ+前部台車に伝達しているのですね。
プロポーションは完璧でありましょう。
電源は006P電池を変換ケーブルでPF受光機に繋ぎでいます。よくぞ5幅の炭庫内に収められたものだと……。

リアビュウ。不思議な炭庫の形状も再現されていますね。受光部分が辛うじて顔を出す。

前部台車アップ。テクニカルな、合理主義の塊。というか、最低部品数のパズルの解答でもありましょう。どうしたら此処まで小さくできるのかと。

シリンダ回り。実機通りの2ピストン
動力伝達の様子もわかりますね。

後部台車もギリギリです。

R24の走行用に、一部改修されたバージョンです。
車体と台車の間の連結ピンをなくし、車体と台車の連結をユニバーサルジョイントのみに割り切る。
また、全長を26ポッチから24ポッチに、2ポッチ縮めています。2シリンダ機として足回りは限界寸法なのですね。
さすがに、R24の走行は失敗されたようです。強度不足で自壊されてしまったとか。でも、この姿、プロポーションは素晴らしいものですね。

改修版の裏面。台車やシリンダの構造や位置関係もよく分かります。
テクニックでがっちり組まれた足回りの安心感をミニマムサイズに。

R24は、シェイには過酷だったのでしょうか。

その後の改良バージョンのようですね。8月24日の記録です。
折衷作のようで、前部台車はユニバーサルジョイントのみ連結。
後部台車は車体とのピンを復活されております。機械的安定性は高そうです。

重量感と安心感のあるサイドビュウですね。全長も26に戻されたようですが、この伸びやかさも良いものと思うのです。
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— 薬師山 (@yakushiyama) August 22, 2020
R32カーブの走行、きわめて落ち着いたもの。ポイント(R32。分岐側)も含むレイアウトなのに粗相なく走ってゆく。すごいことです。

情景展示で絵になる機関車であるのは言うまでも有りません。
アメロコゆえの華やかさ、そして機械的魅力が合わさった素晴らしい題材でありますね。