最初の作品は2005年であったと記憶しています。確かEJLTCの活動がほぼ収束しており、日本のレゴトレイン環境が一番冷え切ってた時代であったかもしれません。
当時、公開のオフ会なんか(ましてや「展示会」なんか)殆どなかった時代だったのです。
昔話ともかく、かのBBBホイールが出たか出ないかの時期です。
車輪は大型のギアにチェーン巻きつけてボックス動輪にするというアイディアであり、メインロッドのみを可動。メインロッドはパイプ使って、ボックス動輪が左右動しても追随できるというものでありました。

当時の究極。最高水準の作品でした。
既にスケールは8幅を志向しています。
目標の一つは「999」であり、他の「111」〜「888」も揃えて、NHKに出演したこともあった誉高き作品であったのです。
その誇り、少なくとも2012年頃までは孤高のものでありました。既にエメラルドナイト10194が市販されたあとでも、この独自性は大きな価値を持ちつづけておりました。
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しかし。時代は移ろうものです。
レゴトレインも2008年ころから参入が増えだし、2010年代になって流れが加速します。そうなると、技術のレベルアップが進みます。
また、レゴのパーツだってどんどん変わってゆきます。
2018年。国際鉄道模型コンベンション(JAM)のテーマが「北海道」になったのを契機に、SUU様のC62も改良が模索されるになりました。
経過も拾って記事にしたいところです。
しかし、それでは何時までたっても現在現代には追いつけなくなってしまうでしょう……。あのJAMの北海道テーマからも1年余の今の、最新状態の作品をお伝えします。

試行錯誤のあった動輪。最初はギアへのチェーン巻きつけの継続から、BBB-XLを検討して最終的に落ち着いたのは3Dプリントによるボックス動輪に。
関山の個人的な好みは無論スポーク動輪であり、国鉄蒸機がボックス動輪ばかりになったのを嘆く方ですが……然し、その宗旨を揺さぶるほどにこの動輪は魅力的です。
(問題は、この種の製品扱う業者が、得てして送料が非常識に高いことですが。品代は高くても良いのですけど、送料が高いのは納得できませんよね。閑話休題。ついでに申せばスポーク動輪のC62やC59も肯定しますよ。自分が造るならそうなりますし)
また、C62の造形だって好みではないんですよ。でも、この造形を見せつけられるとやはり心は動いてしまうのです。
先の作品ではスロープ使ってた箇所は、尽くカーブスロープ化。
全体にディテールも強化が行われています。それでもディテールはバランスと性能を損ねないレベルなのですね。究極に見えて引き算もなされている、安心感さえもあるモデルなのです。

公式側サイドビュウ。
エンジン部の全長が34ポッチ。肥大化を避けた引き締まった印象。これがシビアな限界に制約された日本の蒸気機関車、その限界に挑んだC62らしさに繋がっています。
足回りは引き締まりつつ、走行性能に影響しそうな部材が見えないのも安心感と言えましょう。その中でも、第一動輪上のモーションプレートは割愛されていないのが嬉しいですよね。
ロッドはもちろんメインロッド+サイドロッドです。
ハンドレールの他に空気配管を通すのは近年では定番化してしまっておりますが、やはりあると良いものですよね。

前から。解放テコ。スノウプラウ。
一番印象的なのは煙室扉で、テクニックのハンドル(ステアリングホイール)パーツにΦ4ディシュを組み合わせてサイズアップし、リムの部分をハンドレールに見立てるアイディアなのです。
デフレクタは旧モデルと数少ない共通点です。表面のタイル張りが美しい。
最近出回りが良くなってる直角二等辺三角形のタイルを用いた改修も検討中とのこと。

非公式側前面より。飾りはなくとも、華やかさが伝わります。
題材の魅力を120%位に引き出した作品です。

斜め上。煙突はロボットなどの接続用の突起が側面についたブロックを横組にすることで表現
車両限界ギリギリのドームがタイルでスムージング化。1/4タイルいい仕事です。
既に気が付かれた方も多いと思いますが、エンジン部8幅故に適度な「狭軌感」が出ているのも特徴です。

非公式側サイドビュウ。
テンダの長さも適当でありますね。バランスが良いのです。

この角度からだと、配管が映えます。
動輪の車体幅から奥まった感じも堪りません。
黒一色の北海道のカマだからこそ、安全弁や汽笛が映えます。
C62の汽笛、かのTVアニメではOPの最初の汽笛一声が印象的であったのでした。

ポッチ隠しのスムージングが普及したありがたさよ……!


バックビュウ。
テンダは7幅で造られ、6/7/8各幅の客車どれに合わせても極力違和感がないような配慮です。
しかし、8幅のキャブとの違和感は皆無です。
解放テコ・はしご・尾灯の表現。また連結器下の排障器表現も見逃せません。

テンダの縁処理はパネルですが、斜めになっている部分は変形タイル使用の凝り方です。なお、動力系は9Vに見えて、実は9VとPFのマルチ対応機とのこと。PF走行時には受光機から9Vモータに給電されるわけですね。
それにしても石炭の盛りが巧いです。

後ろ姿も魅力的。

キャブアップ。キャブ窓はグリルタイルに2x2窓の「ガラスのみ」嵌めた作りです。正確に蒸機のキャブ窓の雰囲気、出せるものなのですね。他題材にも応用できそうです。

ギリギリまで詰まった機炭距離も良いですね。


確実に動作するメインロッドのスライド部。
シリンダ尻棒と、その途中で結わえ付けられた丸穴スライド部が併存しているため、上下に並行して横動部分があります。並行しているので負荷が少なく、安定して動作できるのでしょう。
そして、リアルです。

先輪回り。車輪は9V時代の標準車輪部品2927c01の中身を使ったものです。
先台車は完全に横組です。軸受は1x4の溝付ブロック使ってるとのこと。
スポークのない先輪は、C62の様な題材では大事なのですよね。
このスノウプラウは名案!としか言いようがありません。真ん中に1x2タイル置いてるのがポイントです。良い形状になります。

足回りと上回りは平易に分割でき、メンテナンスに備えます。
テンダドライブなのはやや保守的かもしれません。然し、確実に走る信頼感がこの作品にはあります。特急機のC62にですから速度だって肝要ですし。
10余年をへて完成し、なおも進化続ける作品があるというのは、この趣味の世界にも既に「歴史」「伝説」が生まれてることの証なのかもしれません。
今後の活躍も楽しみにしております。