815系は1997年に導入された、熊本地区(鹿児島本線・豊肥本線)用の通勤型。
アルミ剥き出しの、一歩間違うとブサイクになりそうな造形を巧くデザインした車両。シンプルな基本造形に、水戸岡流儀の装飾で柔らかく魅せるというスタイル。丸目も可愛い。
(ただ、飽くまで通勤形で、ロングシートなのは残念極まりないのですが。)
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実物への苦言はともかく。
LIME様の作品は、造形への究極を目指されるもの。
真っ先に気に入ったのが、この車体断面とドア表現。
ドアの微細な凹み。そして絞った断面。この両立。0.5プレート単位での調整さえも入っています。
その繊細な車体を、荒々しきトレインモータ……走行系の上に乗せてしまう。
実は繊細でデリケートな車体と動力系のゴツくて重い部品は相性が良くないんですよね。後者が前者にダメージ与えてしまうからです。

概形。実物どおりの2両編成です。
2両ですが、すごい密度の作品です。
前頭部はトリッキーな表現を重ね合わせ、赤い縁を表現。フィグハンド、パイプ、バー。
穴空きΦ1プレ使ったヘッドライトは中身もこだわる。それゆえ、実物の可愛らしさが伝わってきます。
アンテナパーツ使ったワイパーも見逃せません。

真正面より。
5幅の顔に対して縁取りです。あらゆる場所に逃げ場がない、スキがない! これは奇数幅のもつ言葉にし難い緊張感も取り入れてる?
車体裾、1x1パネルで「避けてる」のも技術として鮮烈。
丸穴空いた赤いスカートも良い効果です。

近年のアルミカーらしい、シンプルな車体がカーブルロープの屋根。
そして、「横組」と「タイル表面出し」を使い分けた側面で表現されています。その上、裾しぼり。電車の造形として一つの究極でしょう。
この作りで、如何に動力系が収まってるのか。先の「相性良くない」問題もあります。制作の苦労が偲ばれるのですね。
床下機器、クモハはみっちり。クハは空気系などですっきり。
このバランスも良いです。

クハの側面アップ。
ドアに1x2パネル使う割切は面白いですね。表現の幅を広げましょう。
側窓はやはりこの形式、横組じゃないと違和感ありそうです。ドア周りとの工法差異もわかりましょう。


パンタグラフと高圧機器。
ものすごい密度感。ワンアームパンタは手を抜こうと思えば手抜きできるところですが、あの車体に見合う似合うのはそれなりの密度が要されましょう。良いバランスです。
無論、強度面での不安は否めません。
しかし、精細なものとしての魅力はそれさえ覆す禁断の味。
造形の究極は、驚かせ、訴え、考えさせるものはあることでしょう。