gigazine「「レゴ」以前のブロック玩具の歴史」
元ソースはこちら
Bricks Before LEGO: A brief trek through history
ブロック玩具の歴史は1930年代に遡る……。レゴは起源ですら無く、有象無象の一つでしかなかった? かなり衝撃的な内容なのです。
概ねの説明は先方の記事を見ていただくとして、いくつか感想など足しておきます。
(画像はgigazineより。またその元は上記動画より)


動画の最初で、クレオにメガと、近年のレゴのイミテーションを見せていきます。
恰も「レゴのオリジナルティ」を疑うかのように。

そして、1949年の「Automatic Binding brick」
一般に言われる、レゴの組み立てブロックのルーツ。これが元祖!
……では、ないのでした。

「しかし、実はこのブロックはレゴのオリジナルではなく、1947年に発売された「Self-locking Building Bricks」というブロックのコピーです。作ったのはイギリスのKiddicraftという企業です。レゴは、このブロックのサンプルを手に入れて、スウェーデンの「GEAS Konstharts」、ノルウェーの「PRIMA」とともにブロックの生産を始めたとのこと。」
これを観ると、「レゴブロック」は有象無象の一つ。独創性は皆無。
木製玩具メーカーのプラ製玩具への転向の試行錯誤の一つにしか思えなくなります。
なお、この時代のブロック玩具に共通して見られる「溝」は、窓などのアクセサリをはめ込むためのもの。こちら参照

Self-locking Building Bricks。書体がこの時代のイギリスで流行ったものですね。
そして、レンガを模したパッケージがユニーク。
この時代のブロック玩具は文字通り、「レンガのおもちゃ」であったことが窺えましょう。

さて。レゴ社の製造したこの種のブロックですが、1952年(1954年説あり)にお馴染みの裏面チューブを得ます。
これによって、レゴブロックはこれまでのブロック玩具の「外れやすさ」を克服し、かつ、他の有象無象との差別化に成功したのでした。
その後はプラ製玩具(自動車やトラクター、後にはミニカー)と併存しつつ、レゴ社の主力商品に育っていきます。
さて。
「Self-locking Building Bricksもこの種のブロックのオリジナルではありません。」と。その前の歴史があるのです。

アメリカの「ELGO」という会社の商品(偶然にしては出来過ぎてる!)、1946年の「American Bricks」。
小さなポッチが特徴。そして、側面にレンガのモールドもあります。「レンガのおもちゃ」として、建築以外の用途は考えていなかったと見るべきか。


その「American Bricks」には1939年には、なんと木製でした。
裏面・表面も圧縮して加工したのでしょうか?
そういえば、ドミノ札の木製セットを持っていましたが(現代のもの。廉価)、あれは木を圧縮して裏表の刻印を造っていたものでした。同種の加工をしていたのかしら? ただ、それでもプラスチックよりコストは掛かりそうです。同種の玩具は他に聞きませんし。

なお、イギリスのKiddicraftも1939年にプラスチック製のブロック玩具……キューブ状のものをリリース。これがプラ製の元祖。
かなり大きなものです。
レゴ社もこの規格に合わせて1950年に同サイズのブロックリリースしたとか。1949年に今のサイズのブロックも造ってたわけですから、試行錯誤の時代か?

更に、その前。1935年 イギリスのPremo Rubber Companyによる「Mini brix」

ラバー製の小さなブロック。2x4ではなく、1x2が基本です。

現存する中身。緑のシートは屋根用。
白いブロックは上面ポッチ無しのタイル相当の部品で、土台用。
箱内右下に、レゴでいうところの「ポチスロ」のような部品があるのに注目。

これもまた元祖というわけではなく。
「その1年前、1934年に作られたのが「Bild-O-Brik」。こちらはアメリカのRubber Specialties Company製」。
画像では語られていませんけど、それ以前があった可能性も否定は出来ません。
もはや考古学の世界。ブロック玩具の問題点は「散逸しやすく残存しにくい」に尽きます。よくぞ集められたものです。

一覧。1934年から戦争挟んで1958年までの24年間の流れ。
そして、1958年(1954年説あり)から現在まで基本構造不変で互換性維持のレゴ。
こうして並べてみるとAmericanBricks(木製及びプラ製)はデカい。ドミノ札に近いので、案外、ドミノを煉瓦に見立てて積んで遊んでいた子供が、崩れないようにポッチをつけた……というところから始まったのかもしれません。
ゴム製の黎明期のブロックが赤・茶色基調なのは素材の都合もあるのでしょうが、やはり「煉瓦」を意識していたことも分かりましょう。
初期のレゴのラインナップもそうですが、ブロック玩具は「家を建てるためのもの」であったこともまた自明です。
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「Bild-O-Brik」による作品。
狙っているのでしょうけど、古代遺跡的な趣。
コレばかりはレゴ、特に新品のレゴでは再現できない風格です。
パーツは1x1 1x2 そして「ポチスロ」です。

「Minibrix」による作品。当時のインストに近い作例。
屋根シートも活用。屋根シートもプラなどの堅い素材に見えますが……?
注目すべきは、全体が今で言うところの「逆組」で構成されているところ。
ブロック玩具はポッチを上面にするという「常識」も、黎明期には無かったことは衝撃ではあります。

Kiddicraft Bri-Plaxによる作例。
マインクラフトのスティーブとゾンビ。最低限だけど、似てる!

American bricksによる作例。特徴の煉瓦モールドが効果的。
特殊ブロックとして、格子状の装飾が存在していたのが印象的です。

Minibrixのリーフレット。バッキンガム宮殿!
昔のカタログ類のこうした大人気ない作例は「届かぬ夢」でしたが、今のAFOL界隈では「がんばりゃなんとかなる」になってるのは隔世の感。

前言撤回……? minibrixでは最初から建物以外の展開も意識していたのでした。
なんでも作れる。これらは型番が付いており、セットとして販売されていた模様。

同じくMinibrix。左右の建築モデル。(当時の)現代建築と、古典的ハーフティンバー。いや、後者はレゴでもなかなか再現できなかったのに(1980年ころになってやっと)

上記リーフレットより、基本的に上下逆組であることが分かります。

イギリス製ではありますけど、アメリカで販売されたのか? 価格表記はドル。
ジュニアセットで5ドル。デラックスセットはなんと150ドル。
1930年代の1ドルは今でいうところの10ドル位の価値でしょうか?

14.5ドルのNo.3セットの作例か? 「Tuder Manor House」
現代のレゴ作品に通じるリアルなモデル。オーパーツのごとく感じられます。

同じく。ハーフティンバーの筋交いの組み方が凄い。ポチスロ状部品を上下に合わせてるのか?
壁は凝ってる反面、屋根は手抜き?ですけど。

こちらはAmerican Bricks。
タウンプラン的発想はこの時代から観られたのですね。道路やアクセサリー、ミニカーも「製品」にしちゃったのは1950年代のレゴ社でしたが。

American Bricksより。このブロックも「上下逆転」で、土台にタイル状の部品を使う構成だったのでした。
窓やドアははめ込み式か?
屋根は……手抜きですね(笑)。

大型モデル。すごい迫力。
でも、屋根は手抜き(笑)。
レゴが凄いのは、スロープブロックとプレートを発明してスタンダートにしてしまったことにあるのかもしれません?
(レゴ社でも2000年頃、ハリーポッターで紙屋根を使いました。流石に評判最悪ですぐに無くなったのは幸いでした。流石に先祖返りとか擁護する気には成れません)
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ともあれ。
ブロック玩具の歴史認識が変わる記事・動画です。
黎明期のブロック玩具が「上下逆組」であったり、リアルな建築をも志向していたのは興味深いこと。散逸しやすいブロック玩具故、オーパーツ的魅力を放つ。或いはバージェス動物群の如く?
また、プラスチック製ブロックの時代になっても、レゴが必ずしも元祖ではない。実は有象無象の一つに過ぎなかったこと。
しかし、その中から技術的差別化(品質やサポートや供給も含め)に成功してきて今の「世界一」がある。
レゴ社はブロック玩具の発明者ではない。
しかし、ブロック玩具を改良し続け、供給し続け、世界規格にしてしまった。
レゴのファンとして、この事実で十分でありましょう。