そして、その「オーパーツ的」な窓・ドア部品のみが1970年代後半、一部のレゴセットにのみ使われた、そのセットは日本でもカタログ掲載され、発売されていた……というミステリアスな事例も。
そのセットに関する情報提供をお願いしたところ、得られたのは1979年の日本版カタログのスキャンデータという「稀覯書」。

1979年 日本版カタログの当該部分の拡大。
日本での型番は「#1902」。しかしbricklinkでは当該セットの番号は「2」とされています。
アイディアブック入りの廉価な入門セットとしての立ち位置は後世の「青いバケツ」のルーツかもしれません。
また、レゴのパッケージで「日本語」が入った最初のセットの可能性もあります(除:汽車セットのシール。あれは各国語にローカライズされてたようですから)。
http://www.bricklink.com/catalogItem.asp?S=2-11
bricklinkにおける「#2」。パーツリストあり。

1979年カタログの、#1902の掲載ページ(7ページ目)。
当時の日本での立ち位置もえらく特殊なセットであることが伺えます。
他の「基本セット」群とは明らかに品番体系・パッケージデザインが異なっていますから。
一次文献が得られたと言え、結局「日本におけるminitalia」という最大の謎は簡単に解けそうもありません。たとえ当該の「#2」や「#1902」を入手できたしてもオーパーツが手許で増えるだけでしょうし。
(ちなみに基本セットのたぐいで古いものは「散逸」するため、入手は至難です……)
ただ、レゴ社がミニフィグに合わせ、1978年に窓やドアの規格を一変させた時、1970年代前半の「外様」であったminitaliaの規格が採用されたのとだとしたらレゴの歴史における「minitalia」の位置は面白いものになりますよね。
で、#2(#1902)はその歴史の落とし形見。楽しくもミステリアスです。
以下余談として、1979年のカタログを眺めてみましょう



1979年といえばミニフィグ2年めですが、表紙のフィグは「ホームメーカーフィグ」です。窓部品も「旧規格」の方ですね。
1ページ目。日本人男児がモデルで日本向けローカライズ。これはレゴのカタログとしては画期的なことでした。これまでこの種の写真は絶対に白人でしたから。
ローカライズのヒントになるのは裏表紙の奥付。
前年発足の「日本レゴ株式会社」とあります。不二商の扱いから、レゴグループの直接扱いに変わったのがこのころ。ちなみに住所は「港区高輪」。長年レゴジャパンのあった浅草橋ではありません。今の赤坂は随分久々に港区に戻ってきたことにんります。

3ページ。ここでもホームメーカーフィグが使われています。
ちなみに1977年頃では既に旧ミニフィグが定着しており、さらには1978年からの現ミニフィグになっていますので、1979年地点では古臭く見えるものでした。

4ページ。デュプロの案内。
子供心にデュプロフィグの顔は怖かったこと思い出しました。今見ると欧州系(特に、北欧)のモダンデザインの系譜なのだと理解もできるのですが……。

5ページ。デュプロの一覧。ちなみに未だうさぎのマークはなかったのですね。
077や078の縦長デザインが新鮮です。
あと、右上の「普通のレゴブロックと組み合わせて」はこの頃が初出だったように思います。


6-7ページ。基本セット。7ページは先程#1902のことで画像あげています。
窓もフィグも旧規格。箱サイドの五族協和旗もとい「黄・赤・青・黒・白」マークも残る。流石に1979年だと古臭く見えるラインナップです。子供心に「ほしくないなぁ」とか思ってました。
ただ、#1902の「浮き方」は印象的でした。変な話ですが、これだけは古臭く見えなかったのです。

8-9ページ。見開きで「レゴランド」。(拡大)
これぞ当時のレゴの最先端でした。但し、いきなりこの形になったわけではなく、1970年代前半からの「legoland」。1976年ころからの旧ミニフィグの流れに乗っていることは忘れてはなりませんが。
実際、1978年のスタート時は新旧レゴランドが混在していたのです。1979年カタログでやっと混在が解消されたのでした。
特殊部品の加わった実際の形に近いリアルなセット。このキャッチは時代を感じさせます。「特殊部品」の定義も時代によりけり……。
ひとつひとつの楽しさに加えて、ロードプレートにいろいろ集め”レゴの街”として巾広い遊びができます 。
右上のミニフィグのポーズ集は印象的です。これだけアクションできますよ! と。
また、余談ですが、この時代の製品はヨーロッパとアメリカで型番違いがあります。「#376フラワーハウス」を見ればわかるのですが、日本ではヨーロッパと同じ型番でした。

10ページ目。水上飛行機や救急ヘリコプターは旧フィグ入。やはり過渡期を感じさせます。
基礎板 大#799は現行の48×48ではなく、50×50の一回り大きなもの。基礎板 中#798は24×32の2枚セットでした。個人的には後者の思い入れが強く、今の32×32基礎板に未だに馴染めません(苦笑)
部品パックは掲載少ないですが、店頭ではもっとたくさん種類があったように記憶します。このカタログは全種掲載でない可能性否めないのです。
あと、往年のあこがれ「上級基本セット」も掲載されています。

11ページ目。汽車セットとモーター、モービルセット。
汽車の価格は気になるところ。憧れの急行列車セット#182は「11500円!」。やはり当時なりに高額でした。手押しの#171は流石にリーズナブル?です。カタログ上で単品車両が消えているのは気になるところ。実際の店頭扱いは残っていたように記憶するのですが……。
「水平踏切」は変な訳ですね。LevelCrossingを直訳しちゃったのでしょう。
モービルセットは恐ろしく売る気の感じられないパッケージです(笑)。Dactaとか教育用の実用本位とも違う、なにか突き放したようなパッケージ……(実際には遊んだら楽しいのでしょうが)。
ちなみにテクニックになる前の旧規格の歯車。この時期のレゴはミニフィグ革命と同時に「テクニック革命」も起きようとしていましたが、それはもう少しあとの話です。
このカタログは全12ページ。さて。
当時人気だった「宇宙シリーズ」が非掲載なのが気になりますが、1979年なのでギリギリ日本での取り扱いに間に合わず非掲載だったのでしょうか。この辺は幼時ゆえ、記憶が不鮮明な部分もあります。
(1979年のクリスマスの花形商品が「宇宙シリーズ」だったような。ということは1979年の後半に商品投入か?)
また、このカタログでは価格掲載があるのが資料価値を高めておりますね。当時は定価=実売のはず。
ここから感じるところは人それぞれだと思うので、細かい論評は差し控えます。
ただ、電動の旅客列車の価格(#182と、#7938の実売)に大差がないのは興味深い事実ですが。今のはリモコン入ってる分というか、鉄道模型的な発展ができる分割安と考えられるのかもしれません。
スキャンデータはayucow様より提供いただきました。本カタログの公開に関してはayucow様のご承諾の上、「関山」の責任のもとに行なっております。大変貴重な歴史的資料ゆえ、全世界のファンの共有物として公開させていただく次第です。
http://www.brickshelf.com/cgi-bin/gallery.cgi?f=512152
全頁分は、こちらに揚げてあります。
追記:関連記事として。
http://legotrain.seesaa.net/article/236177125.html
TOM氏の揚げて下さった、1975年日本語版カタログの話。
古い日本語カタログの「穴」も少しづつですが塞がれつつあるような……。1960年代のものでbrickshelfにアップされたものもあったと記憶しますので、そのうちカタログのまとめ記事が必要ですね。