連載企画【レゴトレイン製品史】は1980年の灰色レールの記述がかなり冗長になってしまいました。
が、この年の「革命」はちょっとやそっとでは収まりきりません。先に記した街シリーズとのシームレス化に、12Vの鉄道模型的展開。
でも、その後の流れも含め、最大に革命的だったのが「#7740 Inter-City」の登場でした。
まず。これまでのレゴトレインはメルクリンの入門セットの如き「小さな、可愛らしい汽車」が殆ど。イメージするなら支線区の山里を走っていく汽車ポッポ、であったと。
唯一の例外は4.5Vの白眉。#182(1975年)でしょうか。

本線の急行列車をイメージしたかの立派なセット。4.5Vに2軸車という制約下で最大限にそれらしさを追求した名セットでした。
それでも、セットのメインは蒸気機関車。
(ちと強引ですが、#182の後継は時代的には遠く離れた#10194なのかもしれません)
レゴトレインは飽くまで「レゴ汽車シリーズ」に留まっていたのでした。無論、前後して12Vや4.5Vの中には幾つかのディーゼル機関車のセットもありましたが、飽くまで蒸機の添え物。近代動力車は主役には成り得てなかったのです。「電車」「電気機関車」そして「高速列車」は夢のまた夢と。
でも。当時の多くの子供達にとっては身近な、或いは憧れの列車はなんだったのでしょう?
1975年という時代、西側の多くの国では「蒸気機関車」は既に過去の存在、或いは身近とは言いがたい存在にになっていた筈です。代わって遠くの街へのお出かけで乗せてもらうのは「電車」や「電機の牽く高速列車」であったことでしょう。乗る機会なくても、憧憬の対象にはなっていたと。
その意味では「汽車シリーズ」は既に時代遅れの存在? 「電化」という革命は求められていたのです。
灰色のレールと濃灰の枕木は、革命を載せてきました。

http://www.bricklink.com/catalogItemInv.asp?S=7740-1
●#7740 Inter-City(1980年)
曲線レール1周分。直線レール12本(6対)。電気機関車と客車2両という構成。プラットフォームとミニフィグ10体入り。
当時のパーツとしては最大限にリアルな造形。そして28ポッチ長のボギー車3両編成という構成は、小型の二軸車ばかりに留まっていたレゴトレインを一気に「鉄道模型」のフィールドに乗せてしまいました。
ここには1980年当時の最高級・最高速の列車の姿があります。そのモチーフは言うまでもなく、当時の西ドイツのIC、或いはTEE。身近ではないとしても、憧れ。
電機のモチーフが西独国鉄の103形であるのは自明ですね。客車は長距離用の一等車でしょう。そして調理電源用のパンタ付きの食堂車。灰レール革命と同時に現れた新部品「トレイン窓」「トレインドア」もこの製品の為に生まれたようなもの。もちろん、簡素ながら客車のインテリアだって表現。
プレートの積層によるパンタグラフの表現は今の目で見れば素朴な印象さえありますが、当時としては先端のもの。パンタ台部分の赤表現も泣かせます。
なにより、赤と黄色のツートンカラーの美しさ! 今の中間色によるリアルさとは違った美しさ。
機関車の操作パネルが宇宙シリーズの転用なのが当時らしい微笑ましさですね。

組み換えモデルは上写真の右下に見られる大型電機と貨車のセット。もちろんインスト入りでした。
高価な12Vのセットですから、12V未販売の日本やアメリカは無論、発売されていた欧州圏でも「憧れ」のイメージリーダー的製品ではあったのでしょう。
されど、「憧れ」が公式に製品として形になって示された意義は大きかったのです。
さて。
革命のその後です。#7740以後、レゴ汽車シリーズ、もといレゴトレインには「今様の、特急列車」という流れが生まれ、定着していきました。

直接の後継製品。1985年の12V、#7745「High-Speed City Express」(12Vゆえ日本未販売)。

1991年の9Vスタートを象徴した#4558「Metroliner」(日本では「インターシティライナー」)。余談ですが、この製品の箱裏組換例に、「電機+客車2両」という#7740的なものも含まれていました(以下写真参照)。
http://www.brickshelf.com/cgi-bin/gallery.cgi?i=3070545
9V時代も。その流れは幾つかの製品で(劣化しつつも)継承されています。

2006年のRCトレイン#7897「Passenger Train」(「レゴ エクスプレス」)。RCシステムよりも、一体化部品の賛否が分かれるセットでしたが……。

2010年からの現行品。#7938「Passenger Train」(「超特急列車」)。PowerFunctionの定着化に一役買っていましょう。そして、1万円台前半という価格は多くのユーザーに「レゴの電車」を身近なものにしました。
(恰もかつての豪華高速列車ICやTEEが、「新幹線」ICEとしてもっと身近なものになったかのように……)
今後もレゴトレインが続く限り、「今様の特急列車」はリリースされ続けることでしょう。その中にはきっと歴史に残る名作も生まれるに違いありません。実に愉しみではありませんか……!
#7740に連なる歴史が栄光でありますよう、願いたいものです。


