2006年7月上旬:車体完成
2006年11月:走行試験、成功
2007年2月:開発断念
2007年8月:解体を前提に最後の試運転。以後、保留。
2010年7月:解体予定

他の写真は以下参照。
http://www.brickshelf.com/cgi-bin/gallery.cgi?f=437530
●経緯
2006年というと、IR(RC)トレイン規格が出てきた年。9Vトレイン規格に黄信号が現示された年でもあります。
そのため、9Vトレインの環境維持にはユーザなりの頑張りが求められもしました。
9V環境を永続させるために必要なのはレールの他に「モーター」。レールから車輪を通して集電する能力のあるモーターです。これは9Vトレインモーターのように一体化している必要はなく、金属製の集電可能な車輪(または固定シュー)があれば、テクニックモーターなどと組み合わせて自由に動力ユニットを造れるという、発展の可能性も秘めていました。
その状況下の2006年6月末、自作集電車輪と動力ユニットのテストの為、自由形電機を1両制作したのです。
●システム
「魔改造」に当たるのは以下です。
・車輪。集電用にBBBホイールにアルミテープを巻いたもの。
・集電子(ブラシ)。車輪に接触して電気をキャパシタに送る。
・キャパシタ。集電が不安定になることが予想されたため、大容量の電解コンデンサを用意。


あとはレゴのパーツのままで、テクニックモーターとギア、ロッドによる駆動を行うものとしました。モーターやギアは何度も交換・組み直しをおこなっています。
●機関車として
機関車のとりあえず従来の9V規格ではありえない「大動輪の電気機関車」とし、車内にモーターとキャパシタを搭載する余裕のあるものとしました。
特定のプロトタイプはありませんが、1920年代以前のスイスやドイツのロッド駆動の電機をイメージしています。将来的にはロッド駆動の電機を何両も9Vで揃え、自走させることが目標でした。
●試験の経緯
集電子が安定せず、なんとか小さなエンドレスを停止せずに走行させる段階に辿りついたのが開発から半年の2006年11月のこと。それでも1周走らせるとどこかが調子おかしくなり、試験の域は出ないものでした。
牽引力はそこそこあり、インテリア付きの重い客車でも3両を余裕で牽引したりしましたが。
キャパシタのおかげで、スピードレギュレータで電源offにしても少し惰性走行続けるのは悪いものではありませんでした。ただ、起動時に集電が安定していないとキャパシタにも電気が溜まらず発進不可になることも多々ありましたが。
結論としては、実用にはならないというものでした。
●まとめ
集電子の制作と固定に凄く手間取ったことが今でも印象に残っています。手先の器用さが要求される類の仕事ですので自分には不向きでした。ここらの技術がある方ならもっと上手くまとめ上げていたのかもしれません。
集電子のまずさと、アルミテープによる集電車輪は集電が不安定なので、それを補うためにキャパシタ(大容量のコンデンサ)を搭載したのも開発規模を面倒なものにしてしまいました。大容量のコンデンサは秋葉原でも入手が困難であり、思うような容量のものが入手出来ませんでした。
車輪のアルミテープも耐久性に問題がありました。集電子と接触する部分は目に見えてすり減るのがわかりましたから。中まで金属製、しかもアルミより堅い金属の車輪なら問題にもならないのでしょうが、薄いアルミテープにその辺の期待は望むまでもありません。
●そして、現状
自由形電機の造形はそこそこ気に入ってのと、技術的にも何か役立つかと思い、開発断念後も保管を続けていました。
しかし、2008年のPowerFunctionリモコンシステムの登場。そして2009年になってPF用の電圧制御リモコンが出てくるに至って、この機関車の技術的意義は全くなくなってしまいました。面倒な魔改造をして、入手の面倒な大容量コンデンサを手配、そして不安定な動作に耐えずとも、PFなら自由な車輪配置の機関車を容易に「自走」させることができてしまうのですから。
失敗作として闇に葬ってしまうのもありなんですが、それも何なので解体前にこうして撮影・発表させていただく次第。
勿論、この種の足回りの機関車は好きなので、いつかPowerFunction・特定モデルありで再生する可能性も含めて……。

ローカル線の貨物列車牽引のイメージで。
考えれば考えるほど、何かいい考えが出てきそうな車体です。
はなはだ無責任で個人的な想いとしましては、
ぜひ崩さず許す限り動体保存をしつつ、
何時の日か、無線版と並ぶ日が来ることを願いたいです。
ううむ。解体済です……。
PowerFunctionで再生することも出来たんですが、手持ちの車両数がそろそろ管理しきれ無い数になるのも事実なので、過去作は解体方針取らざるを得なくなってきました。
でも、惜しむ声があって嬉しいです。その意味では、こうして発表して本当によかった。闇に葬らないで良かった!
これから、何か汲みとって貴方の作品のどこかに活かしてくだされば幸いです。
とても華やかな装飾なので、王族専用列車のように感じました。1920年以前の運賃は高額なので列車も豪盛だったのでしょうか。列車も自動車も昔のほうが高級な感じがします。
電気関係はよく知らないのですが、コンデンサーの容量はどれくらい必要なのでしょうか。BSの写真からは、0.47F? 私の知る限りでは、理科教材屋(仮説社)で、モーターを使った手回し発電機で電気を貯める用に、1F(3465円)が売っています。この高価格では、レゴを買ったほうが良いかも。
http://kasetusha.cart.fc2.com/ca35/122/p-r-s-%A5%B3%A5%F3%A5%C7%A5%F3%A5%B5%A1%BC/
P.S.
関山様の啓蒙のおかげで、#7597に続いて、今更ながら#10183 Hobby Trainを購入してみました。ただし黒丸屋根の建物を作ってみたいというのが第一の理由ですが。
http://www.bricklink.com/catalogItem.asp?P=6081
改めて自分の持っているトレインレゴを調べたところ、2000年以降ではトレイン入りで14種、駅舎等建物4種持っていました。大きいセットは#10001だけで、あとはMyOwnTrainシリーズなど全部列車単品でした。
(電気的にギャップのある)ポイント通過も問題ありませんでした。まぁそれ以前に集電不良はコンデンサで乗り切る思想でしたが。
本文でも記しましたが、PowerFunctionがあれほどに優れた規格じゃなかったら、こちらの開発はまだ断念していなかったかも。ブラシの素材とかコンデンサの容量とかまだ検討課題はあったと思いますので。
◆honobono様
>とても華やかな装飾なので、王族専用列車のように感じました。
うわ、派手すぎでしたか。でも、昔の鉄道車両って色はともかく装飾は派手なんですよ。特別車でも何でもないただの私鉄電車でも外装に金モール入って車内の金属部は真鍮磨きだしとか(笑)。運賃が相対的に高価だったかどうかは確信は取れないですが、或る種のゆとりがあったのは事実でしょうね。
(余談ですが、今だと豪華に見える昔の客車のニス塗りや真鍮金具に白熱灯ですが、1950年代だとアルミ化粧板内装やアルミ金具に蛍光灯の方が高級で贅沢とされていました。価値観の変化は面白いです)
そういえば「汽車のえほん(機関車トーマス)」のイギリスの汽車は装飾多い姿ですが、日本でも明治中期まではアレが当たり前だったそうです。#7597のような派手な機関車も、開拓時代のアメリカでは当然のものだったとか。
コンデンサの容量はご指摘通り0.47Fです。実はこの半分でも十分と思ったのですが、0.22Fとか入手できなくて。そんなに高価ではなく\350位だったと記憶しています。
#10183入手できたのは良かったですね。#10001などもあればかなり充実したトレインワールド展開できるじゃないでしょうか? こうなるとトレイン系作品も期待したくなりますよ!
全然派手すぎではありません。悪趣味な金ピカという意味ではなく、良い意味できらびやかです。私鉄電車外装に金モール、白熱灯と蛍光灯についての高級感の変化など、大変勉強になります。これからも、トレイン知識のご披露に期待します。あまり専門的すぎて、他の読者が遠のいて行かないようバランスを取るのが難しいかもしれませんが。
コンデンサ容量については納得しました。もっと大容量が必要なのかと考えていたので。
>こうなるとトレイン系作品も期待したくなりますよ!
ほめ上手ですね! 人前では上がってしまうタイプなので、そんなに注目されたらいや〜ん...
煩いやも知れぬ知識披露なのにお付き合い下さりありがとうございます。
この種の薀蓄ネタは折り見て記していきましょう。
>ほめ上手ですね!
仲間(レゴトレインビルダ)は一人でもたくさん欲しいですから。増えてくれれば市場も盛り上がり、入手環境だってよくなりましょう。
(今後その可能性はなさそうですが……)本格的に造るならどちらもありですよね。ただパイプ輪切りだとBBBホイールの方も削ってあげないと車輪径のつじつまが合わなくなる可能性もあり、かなりの手間も予想されてしまうのが難点ですが。