箱根登山鉄道 チキ1形は大正8年……1919年の開業当時の車両です。アメリカ製の機器を装備した木造電車。車内は2等+荷物+3等と区切られていました。7両導入で、初期に1両が事故廃車。
1934年に等級制廃止。
1950年に鋼体化によって木造車体が喪われますが。
しかし。その後の活躍が長い。
足回りの更新も行い、もはやオリジナルの部品は皆無の状態ではありますが、経歴上はチキ1形→モハ1形として104-106が現役であります。

「博物館のディスプレイモデル!」と思わせてしまう。この解像度。
実際に、原鉄道模型博物館のチキ1の大型模型は意識されているそうです。
木造車体の短冊張りをタイル張りで再現、できてしまうものなのですね。この作品の肝でありましょう。
色彩の渋さも見逃せません。焦茶の車体は思い切った「黒」解釈。
その代わり、足回りは新茶に。窓枠も新茶。
屋根も新造時の綺麗さを意識した白屋根です。
黒い車体は、漆塗りのメタファでもありましょうね。
旧型車両の茶色……すなわちブドウ色ですが、明治の昔は漆塗であったとか。つまりは黒に近い色でありました。
古典題材をどんな色で作るべきか、考えさせられてしまいます。
(尤も、褪色すると白っぽく薄くなってきて、それはそれでレゴの新茶色っぽくもなるようですけども。正解は一つではありません)

鮮烈な、前面!
8幅に収まっているとは思えないのです。角度やディテール。異世界に。
しかして、ディフォルメや省略という大事な文脈も喪っていません。

屋上機器も抜かりなく。ベンチレータやポールが実に精細です。
ポールはパーツの加減で茶色になったと伺いましたが、結果として大成功でしょう。

インテリアも含むモデルです。
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