マレー式は開発者の名に由来するもので、前後二組の走り装置をもつ4シリンダ複式の凝った機関車。
当然、それなりの大型機になりました。
1913年に米 アルコ製の9750形が24両。同じく米 ボールドウィン製の9800形が18両。独ヘンシェル製の9850形が12両。結構まとまった数が輸入されたのですね。
マレーは良く知られる東海道線勾配区間(箱根越え、要は御殿場線区間)以外にも、大津京都間、東北の黒磯白河間、信越の長野直江津間、関西本線の亀山加茂間と各勾配区間幹線用に広く投入。貨物列車用であり、旅客列車の補機にも。
然し、使い難い機関車ではあったようで、御殿場線区間以外では定着せず。そこでも、丹那トンネルの開通も待たずに(D50が投入されたため)、1933年までに全廃されてしまいます。僅か20年足らずの活躍でありました。
ドイツ製の9850形の1両が鉄道博物館開館時からの展示物となり、長く万世橋にあり、今は大宮に移動しています。日本で唯一のマレー式保存機であり、また唯一のドイツ製大型蒸機の保存機でもあります。これはおなじみの方も多いことでしょう。
なお、日本以外ではマレー式は結構重用されておりますね。
日本の鉄道車両史が複雑なもの特殊なもの、そして輸入品を嫌う傾向が極端であり(標準化や国産化は正しいのですが)、もう少し可能性を見出すことは出来たかも知れないとか思うのですけども。

そのマレー式は日本で馴染みが薄く、活躍期間が限られることからあまり作例がありません。
なにより、動輪という貴重部品を大量消費する題材でもあります。ゆえに、9850様が作られてきたときには驚きました。
このモデル。黒い車体に赤いエンドビーム、真空ブレーキの立ち上げなど、如何にもな大正期の日本の機関車ですね。明治ほど派手でなく、昭和ほど禁欲的ではない、程よい鮮やかさではありませんか!
9850形と特定して良いのか自信はないのですけども、全体にアメリカ機的なマッチョ感はありませんので、やはり交通博物館・鉄道博物館で見慣れたあの9850形で宜しいのでしょう。
缶銅はカーブスロープ表現です。ゴツ目の煙室扉が嬉しい。
肝心の足回りは、純正動輪のC形x2です。
これだけで迫力十分ですね。惜しいのはマレーの魅力たるシリンダ部分の造形が平面的であることと、メインロッドの割愛でしょうか。前者は何らかの丸ブロック等の造形できたら素敵になりますし、後者はbikkubo式の簡易動作なら実装可能に見受けられますが如何でしょうか?

サイドビュウ。
缶胴と足回りの間のパイピングが効果的です。
マレーでは後ろの走り装置は固定なのですけど、模型で作るなら前後とも旋回するように造るのは正解でしょうね。自分も造るならそうしますし。
日本形らしくするのであれば、全長はもう少し……ギリギリまで詰めたほうが締まった感じに見えるかも知れません。後ろの走り装置一組を2プレート前進させる事ができたらかっこよさそうです。
煙突はΦ1ではなくΦ2に。
難しいかも知れませんがスチームドームや砂箱もΦ3な表現が出来たらより魅力を増しそうです。
キャブは大きめ?かと思いましたが、実物写真観ると大きめで正解ですね。
先の全長詰めしたらバランス良くなりそうに思えるのです。

真上より。金色の汽笛や安全弁が綺麗です。

この角度が、格好良い!
6幅スケールの作品ですが、7-8巾の世界観にもしっくり来るバランスでありましょう。

キャブ内。機関士と機関助手の二人乗務対応です。
なお、窓枠は赤いパーツに黒塗装を一部行っています。いずれは黒の2x2窓に変更でしょうか?

キャブインテリア。メータや弁、焚口がそれらしい。

足回りアップ。

スノウプラウも取付可能です。
雪の中をこの機関車がやってくる情景はワクワクしますね。御殿場線区間では雪もありそうですし、信越線なら活躍の舞台が雪景色です。



動力系はテンダドライブです、Powered UPのシステムを組込。
実物同様の三軸の炭水車。機関車と炭水車の全長バランスも良好ですね。
なお、PUならもう少し背を低くして、古典機らしさを狙えるかも知れません。2ブロック分ほど背を低くして、はみ出す電池boxは増炭枠で覆う手もあります。また、機炭間隔も2ポッチ分ほど詰められるかもしれないと思いました。
8850様の8850形。
初の蒸機作品……だと思うのですが、初にして抑えるべきところは抑えた良作です。幾つかご意見してしまったのは恐縮ですが、少しの改良で大きく伸びる作品と思うのです。今後の改良、または新作などに大きく期待しております。
そして。
可能ならば、hiro氏の戦前「富士」編成の補機として活躍してほしいものですね。
7幅フルスケールは模型的に似合いそうです。また、初期鋼製客車は時代的にもマレーとギリギリ合致致しますし。