その頃の市電は今より路線系統がもう少し多く(いわゆる「ガス会社周り」あり)、一日券があったかどうかわかりませんが(多分無かった)、それでも時間潰しに何系統か乗ったものです。主力は500形という1950年代の旧型車で、濃青と濃クリームというやけに渋い色に塗られてましたっけ。
正直、1960年代の700形800形も含めて、魅力は感じにくかった。今思えば勿体無いことですが、当時の自分の電車の形状の好みの上ではどうしょうもありません。
(路面電車のおへそライト苦手で窓上じゃなきゃ嫌とか、1960年代の半端に古い電車嫌いとか)
まぁ、そのへんは贅沢が言えた時代でしたが。
次は1998年冬。会社の社員旅行で1泊2日函館。二日目自由行動で行くとこもないので市電に乗る感じ。で、この頃は500番代の旧型車が皆無なのと、路線整理の寂しさに軽くショックを受けたものです。700・800番代の車輌も健在でしたが、更新が大規模に進められてるところでもありました。7000番代8000番代の更新車にも魅力は感じにくく。
写真も残していません。まぁ鉄道趣味離れしてた時期でもありました。
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今度も、過度な期待はせずに訪問したのです。
ただ、気になってた車輌はありました。もはやランドマークであり「名物」にベタすぎるのですが、39号「函館ハイカラ號」の存在です。世界的にも貴重な、本物のヘリテージトラムの一つ。ややレトロ演出はされておりますけど、十分に許容範囲。
なにより貸し切り用とか特別な日にしか動いてないのではなく、特定スジで通常運用に入ってるありがたさ。
訪問が平日故に動いてないかと思ったら、火・水曜日以外は運用に入ってるとのこと。これは期待が膨らみます。

かたおか氏の仕事場のある金森倉庫(赤レンガ)の最寄り、十字街電停。
ここでハイカラ號(以下39号)を待つとやってきたのは……700形719号。
さらっとやってきたこの車に、軽く感銘を受けてしまったのでした。

先ず。旧塗装?への復元。広告類ほとんどなし。
車体も足回りも、製造された50年以上前の姿をそのまま残してる。すっきりと、シンプルな美しさ。飾らない日常の美しさ。それが穢されてない。貴重な個体に思えてきたのでした。
あ、「函館の電車、いいかも!」と思った瞬間です。

そのちょっと前にも700形同士の離合。広告を纏っていますが、これはこれで悪くないものです。電車の形状を無視した塗装じゃないですよね。
左の「犬電車」可愛いですし。
そしてこの十字街電停。分岐のある中々良い雰囲気なのでした。

電停すぐの分岐点。操車塔がしっかり保存されています。右手奥にもクラシックな建物が残ってる!
このロケーション、暫く居ても飽きません。
ただし、すぐにやってきた39号に乗ります。オープンデッキの電車に乗るのって初めて。運転機器の並ぶ運転台の横を抜けて、車内へ。不思議な感覚ではありますけど、よくよく考えてみたら、黎明期の電車って例外なくこの形状だったのでした。昭和の初めころまでは……。
女性車掌さんから一日券を買って、はじまりはじまり。
(運行経費の高そうな車輌、一日券で乗ってすいません……)

まず、片方の終点<<続きを読む>>