9600形は1913年から1941年まで800両以上が製造された中型の貨物用蒸気機関車。
その使いやすさで以て、稚内から鹿児島まで、もとい樺太から台湾まで活躍した機関車です。
また1976年には「最後の現役蒸機」として引退しています。後継機を差し置いて長く使われたのでした。
但し、力は強いものの脚は遅い。
ある程度の華やかさに加えて「脚の速さ
※」の求められる動態保存機には恵まれていません。
※:動態保存の蒸機は、今の高加減速の電車・気動車と同じ線路を走らねばなりません。高速性能の良い機関車である必然が有ります。その意味でC57やC11が多用されてるのは必然性があるのでしょう。 スタイルは良い意味での「鈍重」さ。寧ろそれが
ユーモラスさに繋がる。ドイツ系のルックスも相まって、一周回って可愛らしささえ。恰も
「髭小人」的な雰囲気じゃないでしょうか。ハイホーハイホー♪
今度のryokuchakuma様作品。なかなか好ましいルックスです。
(
一次完成版。メインロッドは省略されているものの、サイドロッド付き)
鈍重さとユーモラスさ。十分に。
(当時の基準での)限界まで重心を上げたボイラも9600らしい。
小さくまとめているのも、中型機9600形らしい。
(小さくまとめるのは、案外難しいのです!) 注目すべきは動輪周り。通常径のトレイン車輪(テクニック軸)を使用。ゴム巻き有りますので粘着性良いですし、入手性も良い。なにより、9600の小さめの動輪径の雰囲気十分に感じられるじゃないですか。
9600の動輪径は1250mmで、客貨車の860mmよりは大きいのですが蒸機としては小さい部類です。そして、電気機関車(EF58等)と同寸法でもあり。その意味で通常径車輪で表現するのは間違っていないでしょう。
但し、通常車輪にロッドつけるのは未だ難しい。またフランジレス版もないですから、固定台枠での多軸車も難しい。
そこを一気に解決しているのが、
第2動輪・第4動輪を「浮かせる」という妙手。
第1動輪と第3動輪が安定してレールに面する。
内部のギア連動で「浮いてる」第2動輪・第4動輪へ伝達しています。
第2動輪・第4動輪はレールのクリアランスに余裕があるため長さ2のテクニックアームでクランクが作れ、ロッドを取り付けられる。
内部構造。右が前です。
第2動輪と第4動輪が1プレートづつ高い位置に付けられているのがわかります。
ズレはありますが、ギアはこの程度は許容してくれるのですね。
蒸機の足回り、この手もあるのか! と。
浮いてる車輪も気になりません。
なお、機関車のギアはあくまでロッド伝達用です。
模型としての動力はテンダドライブ(炭水車にトレインモータ)ですね。この無難さは好きです。
試運転の様子
ポイント分岐側もクリア。 先輪は外見のバランス面で小径車輪使用。直ぐにキィキィ鳴り出す軸部の耐久性がない部品ですが、その対策に固定シャフトに対して独立車輪という方法を取っているようです。ただ、このセクションの耐久性は却って気がかりです。鳴るのを承知で通常の軸受にしたほうが無難かもしれません。ルックスも良くなりますし。
こちらは
二次完成版。メインロッドも加わりました。
但し、足回りの最大幅が10幅を超えてしまっています。シリンダ周りがかなり膨らんでしまっているので、先の一次完成版にあった9600らしさ、日本型蒸機らしさが喪われた感もあり。
機能を取るか、外見をとるか。ここは蒸機モデルの難しさです。
(スライド部分も1ポッチ接続なので、耐久性面での問題もありそうです)
あくまで個人的な意見ですが、一次完成版の方が整ったモデルに思えますが、如何なものでしょうか。
「二次完成版」の内部構造。
肝心の部分は一次完成版と大きく変わりません。
残念ながら、
11幅に及んでしまう足回り。大きな作品ですと気になりにくいのですが、この9600が小柄に可愛くまとまってるだけに、ちょっと辛い。
でも、蒸機は「試行錯誤」と「経験値」です。
ここから改良されること、願っております。「基本」と「大胆なアイディア」で秀でた作品なのですから。