そのすき間を埋めるような作品が11月15日にリリースされます。

「うみまち鉄道運行記 サンミア市のやさしい鉄道員たち 」(富士見L文庫)
著:伊佐良 紫築/絵:戸部 淑
富士見書房の当該HP(立ち読み版あり)
うみまちの電車は、行き交う人々の優しさを運び、巡っていく−−
西海岸の港町を走るサンミア湾電鐵。女性運転士のメグと車掌のシャーリーのコンビが乗務する電車『リトル・フェアリー』に、無賃乗車犯の少年が乗り込んで……? ふたりの少女と電車を巡る、心温まるストーリー。
表紙から受ける第一印象は、天野こずえの傑作「ARIA」の電車版か? というもの。
表紙の奥に描かれた電車は「キィ・システム」のブリッジ・ユニット……サンフランシスコの伝説的な連接車。この設定がされている地点である程度の「濃さ」は予見されましょう。
ただ、帯はちょっと気になる。
恰も有川浩の「阪急電車」を思わせる表現なのですが……実はあの小説は苦手でした(出来の良さは認めるけど苦手)。そういう雰囲気だったらアテが外れるかも。
amazon.co.jpで早速予約したものの、期待半分不安半分。
しかし、「立ち読み版」が上がっていたので読んでみたところ。
冒頭の13ページだけで目頭熱くなって来ました。これは凄い作品。
文体文調が昔の名作鉄道ルポタージュ、それも壇上完爾を彷彿させる美麗文調!
そして、鉄分……特に技術的な描写は寧ろ濃すぎるほどで逆にドン引きする読者さんも居るかも。でも真鍮無垢の如き「本物」の知識はきっと輝き続けるはず。
無論、主人公たちの相棒は「ママのくれたスケッチブックと同じまっさらな白と、絵本の妖精が着る服のようなライム色のツートンに塗られた」ブリッジ・ユニット。
電車が発車し、物語が走る出すのが楽しみでなりません。
一つだけの不安。
wikipediaでキィ・システムの項目読めばわかるのですが、その終焉は苛立たしいほどに悲劇的なものでした。そこをこの作家さんは如何に描かれるか……?
……お願いです! ハッピーエンドになることを祈っています。

キィ・システムの年次報告書表紙。黄色い電車がブリッジユニット。
Bay Area Rails Photo Galleryより(写真多々)
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レーベルの「富士見L文庫」も興味深いものですね。ライトノベルと文芸の中間点を目指しているというスタイルは興味深い。ラノベとともに育った世代としては、このレーベルは要チェックかも。