「City」に多用され、多くの場合は嫌われる、あの部品。
しかし、既に#60051 ハイスピードパッセンジャートレインの前頭部はYonenaga氏の「ICE3」。同じく薬師山氏の「小田急50000 VSE」という見立てがなされ、「ひょっとしてダメ部品ではないんじゃないか?」という地位を得つつあります。
そして。またひとつ伝説が生まれつつあります。

ヘリやヘリプレーン(オスプレイ系)の前頭に使われてる%11293は2013年登場の部品で、一体成型にしてはやや古風というか現実寄りな造形が特徴です。Cityのヘリを魅力的にしたのは認めざるをえないでしょう。一体成型ですけど。
この部品は最初から「鉄道車両にも転用できないか?」と言われてました。
ただ、実在車輌ベースだとなかなかプロトタイプも浮かんでこない。2013年に白、ついこないだオレンジがリリースされたばかりではありましたが。

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いわゆるオランダ国鉄の近郊型電車の「犬の鼻」に見立てるとは。
正直、考えたこともない予想外の展開でした。ばっちりというか、それ以外の何者に見えない。或いは、細かいパーツ構成で造形したモデル同等の魅力を放ってるといえばいいのでしょうか。
実物はこちら参照(wikipedia 英文)
オランダ国鉄の標準型であった「犬の鼻」タイプのボンネット電車の二世代目。Mat’64というのは1964年に開発が始まったから。導入は1966年から1976年まで。第一世代のMat’54に比べて随分すっきりとした顔になっています。ライト周りの意匠は1970年代を先取りした近代性もありましょう。
実物写真:wikipediaより
薬師山氏の作品に戻って。
前頭部は元がヘリであるがゆえの天窓などついていますが、こうしてみると全く気になりません。
それよりは、すっきりと流れるライン。丸みからくる愛嬌が犬の鼻二世代目にしかみえないのです。
なにより、裾の処理が実に秀逸。1x2のカーブスロープがラインが揃うのですね。そしてライト周りの5幅部分に繋げる。美しい。そして、この下半部故に一体部品を使いながらも細密感が生まれています。

側面は「難しいことは考えずに?」シンプルに纏められています。クリアブロック重ねただけの窓。しかし、違和感は皆無。前面との兼ね合いでサイズのバランスも良好です。
プレート使わずブロック一発で決められたような窓の上下方向の位置も狙ったかのように「ぴったり」。
素材と題材の相性の良さ。それを見出し、かつまとめあげた製作者のセンスが光りましょう。
オランダ国鉄のやっぱり特徴だった「斜め帯」は縦帯に割り切っていますが、これも自然に見えます。
オレンジのトレインプレートはホライゾンエクスプレスの転用。あのセットを部品とりなどにばらすと以外と使い道がないので、この転用はあり。
カラーリングは実物の黄色を割り切っています。しかし、光の加減でそう見えるのかな……? 位の感じにしか見えません。というより、この電車はオレンジ色のほうが似合うんじゃないのかと思うほど(暴論)。とはいえ、%11293のカラバリが増えてきたら(実物の黄色や、実物デビウ当時の緑)また違った展開も可能になることでしょう。毎年のCity新製品情報が楽しみになってきました?
全体には部品数少なめに、シンプルに纏められているように見えます。
良い意味で製品にありそうな、いやこういう製品出してくれって雰囲気なのですね。「レゴらしい」と言っても良い。この種のアレンジ・デザイン、やはりセンス要するものです。リアルの追求とは別ベクトルです。
最後に。
Mazta-k氏やYonenaga氏のドイツ鉄道の今風の近郊型(#7938派生)もそうですが、欧州形の近郊型作品が充実しつつあるのは嬉しいこと。
欧州系のレイアウトで、並んでるのが特急や高速列車や豪華列車ばっかりって情景、ちょっとガキっぽい(そういう駅とか時間帯もあるのでリアルじゃないとは言い切れませんが)。その意味で、渋い引き締め役としての近郊型はありがたい存在です。
近郊型というか普通列車があると、その世界が旅行者の観点から、恰も生活者の観点に降りてくる……より身近に感じられる、というと些か大げさでしょうか?
蛇足。
そういえば、この顔で両運転台の荷物電車もありましたよね……。そのためにヘリ2機潰すのは有り得ないでしょうが(笑)。