この計画、なぜか当時は発表されなかった※ようで(手許の鉄道趣味誌の当時の号には記事がありません。全て持ってるわけじゃないのでなんとも云えませんが)、一般に知られるようになったのは21世紀に入って「幻の国鉄車両」なんて書籍が出てきてから。
※:但し当時の技術系専門誌では紹介されていた可能性はあります。
電源車といっても冷暖房などのサービス電源用ではなく(これは実例多いですよね。水戸のマニ50とか)、ガスタービンの大出力を生かして大容量の発電を行い、電車を自走させてしまおうというもの。
電化区間(運転区間のメイン。それなりの長距離)は電車として運転、非電化区間(飽くまで支線への直通。短・中距離?)ではガスタービン電源車を増結という感じ。
それなりに合理的に見える計画だったでしょう。1970年代なかばでは非電化区間も多く、またそうした線区への直通も多くて「架線下ディーゼルカー」の非合理も多々ありました。
また、ガスタービンは今も固定発電装置として使われるケースありますが、発電用などで一定速度で回転させ続ける分にはそれほど燃費も悪くないそうです。
ダメだった理由はわかりにくいです。複合的なもの(初期費用・燃費等・電化との経済比較・組合対策)とは思いますが。ただ、この種の電源車は世界的にも実用例は皆無です。やはり根本的にダメな理由があるのでしょう。
ともあれ、1970年代の国鉄はガスタービンで出来ることはなんでも考えてたようで、ここはマニアの妄想をも上回るカオスプランの死屍累々。
で、こともあろうにこんな昏い題材をG@ひたひた様がレゴ化……CAD化されてきました。いや、プラン図では既存車両の設計を使いまわしてるので、レゴ化という面では意義のある試作ですが。

その1「ガスタービン電源制御車半室案(急行電車仕様)」
先方の記事こちら。
こちらの471系試作への意趣返しらしいです(笑)。いや、余りに強烈です。
急行型電車への併結を前提としたガスタービン電源車。半室を客室にしたタイプ。中央1箇所のみのドア、半室が機器室。でっかい排気筒。そして高運転台のおなじみの顔が両端に。ゲテモノ感が半端じゃありません。
見慣れた電車が怪し気な姿になってるが故のカオス感があるのですねぇ。
(余談ですが、半室の客室はどんな使い方するつもりだったんでしょう? 電源車は非電化区間のみの増加とするとえらく半端な……。かといって全区間電源車繋げちゃあんまり意味は無いですし)
なお、交直両用急行型電車の作品として見ますと、前面のタイフォンカバー表現はなるほどと思いました。信号炎管は良いアクセントですね。

その2「クヤ593-1…なのか?(ガスタービン電源制御車全室案)」
先方の記事こちら
全長15mの小型車両。先の半室案とは同時に出てきたもののようですが。カラーリングに関する記述がないため、交流事業用車の色に合わせたそうです。
前面形状はしる人ぞ知る、孤高の名車クモヤ495(架線試験車。実在)の形状を流用したもの。
ただ、長く見えるクモヤ495と、このちんちくりんな電源車では受ける印象は全然違いますね。何も知らない人が見たら「ディーゼル機関車の新種?」くらいに見えるかもしれません。そう思うと、意外とかっこ良い? やはり不思議な題材です。
ところで、クモヤ495のレゴ化を考えてみたんですが、色を471系に揃えると全身が濃赤。濃赤のトレイン窓が必要という絶望的な事実が……。クモヤ193 50番代として青で作る手もありますが。うーむ。
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当該書。おすすめです。
実現しなかったゲテモノ的車両を楽しむ以外に、意外と初心者向けにも、国鉄車両の歴史を概観する補助線にもなるような一冊です。実現しなかった形式を語るためには、当時の設計思想なども説明しなければならないため、結果として国鉄車両史全体を概観できる一冊になってしまっているのですね。
(実在形式に関してはwikipediaなどで調べれば良いのですし)
制作するネタ探しやら、モチベーションの向上にも繋がりましょう。すべてのお題に形式図(但し架空のものが幾つかあり)とスペック入。一家に一冊!
