しかし、軌道系への転用という意味なら先にもう一つの段階があります。日本でも発売されていて、そこそこ所有者・ファンも多い「モノレール」。1987〜1994年の間に展開されました。
◆「モノレール」のセット
モノレールのセットは3種類のみ。それも時代は離れていますので(1987・1990・1994)、複数のセットが同時に市場に存在していたわけではありません。他は拡張レールセットが2種類でこれも時代が異なります(1988・1991)。
単品の車輌などは最後まで存在せず。そもそも、複数列車が線路上に存在することは最初から考慮されていないシステムでした。
なお、サービス扱でモーターなどの部品は用意されていた模様。

#6990 Monorail Transport System(1987)
最初のモノレールのセット。別名「ヒュートロンモノレール」。701ピース。
モノレールは#6399エアポートシャトルのイメージが強烈ですが、元来は街シリーズではなく、宇宙シリーズの惑星基地用に開発されていたものなのですね。
コースは単純なエンドレス。但し高低差は取り入れられています。駅というより基地は地上と高架上に一箇所づつ。

#6399 Airport Shuttle(1990)
730ピース。このセットが一番有名かもしれません。モダンな都市交通でかのメトロライナーあたりの組み合わせが似合いそうですが、実はこちらの方が1年先輩です。
惑星基地から転用されたシステムは「街」にも自然な調和を見せていたのでした。
コースは二重ループで、二重高架という見せ所のあるものになりました。駅は地上駅と高架駅。

#6991 Monorail Transport Base(1994)
別名「ユニトロンモノレール」。551ピース。最後のモノレールセットとなりました。
再び宇宙シリーズに戻りましたが、レイアウトはポイントが新たに加わっています。また高低差を生かした展開という意味では一番過激なものにもなりました。大変に見所の多いセットです。
列車は普通の列車と言うよりは、宇宙船や惑星ローバーの操縦席部分を運ぶコンテナ台車的なものになっています。実際、巧く動作すると高架基地上の宇宙船にコクピットがドッキングしたり、地上基地のローバーにもドッキングしたりするとか。このギミックのために方向転換機能もフルに使われています。

拡張レールセット。ヒュートロンモノレールに合わせたもの。曲線レールと直線レールのみの割とシンプルな拡張セットでした。
(画像は#6990ヒュートロンモノレールを組み合わせた拡張図です)

拡張レールセットで、AirportShuttleに合わせたものです。このときにポイントが初めて登場しました。日本では発売されなかった模様です。
(画像は#6399AirportShuttleを組み合わせた拡張図です)
◆モノレールシステムの概要
モノレールとは言いますが、平面な路盤上を中央案内軌道に誘導され車輪で走るというもので、実質的には「新交通システム(AGT)」の方が近いかもしれません。AGTの殆どは側方案内ですが、中央誘導方式では「VONA」が実用化されています。

(wikipedia VONAより)
採用は日本での2箇所のみ(それも1箇所廃止)。お世辞にも成功作とは言いがたい。
とはいえ、他システムのAGTとともに、当時は未来的なものに思われたのでした。1987年というのはそうした時代でもあったのです。
駆動は実物と異なり、レールの真ん中にはラックギアがモールドされており、そのラックを挟む形で縦向きのピニオンで駆動するというもの。このため急勾配もらくらく登っていきます。
如いて現実の乗り物でこれに近いシステムを上げればロヒャー式のラック式鉄道が該当しましょう。この採用例である瑞西のピラトゥス鉄道は世界最急勾配の鉄道なのも宜なるかな。
と、云うわけで「VONA」+「ロヒャー式」の組み合わせは急カーブや急勾配をクリアする、興味深いシステムになったのでした。
制御は地上の専用レールによって、「停止」と「進行方向切替」が可能。即ち4.5Vトレイン並ことが出来た由。なお、現在ならPowerFunction使ってのリモコン運転も理論上は可能です(例は見た事無いですが)。
速度は……先の急勾配対策などもあり、4.5Vトレインくらいになっています。高速感のある外見ですが、まったり気味。玩具としては物足りないのですが、模型としてみたら嬉しいスケールスピード。
編成は「付随車−動力台車−付随車」しか想定されていません。一応、付随車を片方のみとか、電池搭載位置を何とかすれば動力台車のみの運転も可能です。牽引力には余裕はあるようで、後世のマニアの運転では「付随車−動力台車−付随車+付随車」みたいな編成も。
電源は角型9V乾電池(006P)。今のようにニッケル水素電池の無い時代ですから、寿命の短く高価な006P電池の交換はモノレールをより贅沢なものにしていた感はありましょう。
贅沢……。モノレールが衰退した理由はこれに尽きましょうか。
モノレールセットの価格は何れも日本円で2万円を超えてしまうものでした。当時は未だ大人レゴの需要はありません。また、9Vトレインは確かに2万円を超える価格ではありましたが、こちらは鉄道模型的発展要素という可能性込での価格です。その上、付随車に於いては4.5V等の過去資産まで生かせる、当時で25年の歴史と実績のあるシステムでもありましたし。
しかし、モノレールシステムは商品数の少なさからわかりますよう、「閉ざされた」ものに過ぎません。ここへの「投資」はそれなりに思い切りとか余裕が必要であったと。
これで売れない・売りにくい品になってしまったのでしょう。
(後編に続きます)